改正がもたらした派遣形態における在留資格審査の激変と行政の意図

 出入国在留管理庁(旧入国管理局)は、労働市場の流動化に伴い増加傾向にある人材派遣会社を介した外国籍人材の就労環境を適正化し、在留資格の目的外活動や実体のない雇用の不正な発生を防止することを目的に、在留資格「技術・人文知識・国際業務ビザ(以下、技人国ビザと表記します)」の審査要領を改定し、派遣契約に基づく申請への審査基準を劇的に厳格化いたしました。

 令和8年3月に施行された新たな運用のルールにおきましては、派遣形態特有の雇用関係の複雑性を背景に、従前よりも格段に厳しい証明責任が課される事態となっております。これまでの実務におきましては、派遣元企業との間で有効な雇用契約が締結されており、想定される職務内容や一定の派遣実績、または今後の稼働見込みを示す書面が調っていれば、個別の派遣先企業が完全に確定しきっていない段階であっても、将来的な就労計画の蓋然性が認められて許可が交付される事例が少なからず存在いたしました。

 しかしながら、一部の悪質な事業者が実体のない求人や内定を悪用し、在留資格を先行して取得させた後に、本来のビザの要件を満たさない単純労働の現場へ外国人を送り込むといった不正就労の温床となっていた事実が、今回の抜本的な制度改正を呼び込む呼び水となりました。出入国在留管理庁は、こうした実態を排除するべく、審査の主眼を申請時点における個別の具体的な職務の実体へと完全に転換したため、派遣会社はこれまでの申請手法を根本から変革せねばならない状況に直面しております。

申請時点で派遣先および具体的業務内容が完全確定していることの絶対的必要性

 今回の審査要領改定に伴い、派遣会社が技人国ビザの変更または招聘の申請を行うにあたっては、出入国在留管理庁への書類提出の段階で、外国籍社員が実際に稼働する派遣先企業が明確に決定しており、かつその現場で従事する具体的な職務内容が確定していることが必須条件となりました。この確定性の立証には、単に「〇〇株式会社に派遣する予定である」という主観的な説明だけでは全く足りず、それを客観的に裏付ける法的効力を持った書面の提出が不可欠です。

 具体的には、派遣元と派遣先の間で締結された「労働者派遣基本契約書」の写しはもちろんのこと、当該申請人に係る個別具体的な契約条件を明記した「労働者派遣個別契約書」、あるいは派遣先企業が発行した「派遣受入合意書」などの一次情報に準ずる書証を、申請時に過不足なく添付しなければなりません。もしこれらの書面において、派遣期間、就業場所、業務の範囲、責任の所在などが曖昧である場合や、「入社後の研修終了後に適性を考慮して派遣先を決定する」といった、派遣先未確定の状態での申請を行った場合には、職務の具体性および適法性が立証不可能とみなされ、追加の資料提出を求められることもなく即座に不許可処分が下されるリスクを内包しています。改正されたばかりの法律は現場の状況を加味せず、必要以上に厳格運用される可能性が高いのはいつの時代も同様です。

派遣形態特有の二重審査構造と職務関連性の立証ハードル

 派遣形態による「技人国ビザ」の申請においては、直接雇用の場合とは異なり、派遣元企業と派遣先企業の「二重の属性・実態」が同時に精査されます。すなわち、給与を支払い雇用主となる派遣元企業の財務健全性や労働関連法令の遵守状況が厳しくチェックされるのは当然のこととして、それ以上に「実際に指揮命令を下し、業務を行わせる派遣先企業」の事業規模、業務内容、および受け入れ体制も評価されます。特に重要となるのが、申請人が大学や専門学校等で修めた専攻分野の知識と、派遣先の現場で日々遂行する主たる業務との間に、矛盾がない直接的な「職務関連性」が存在することを書面上で論証する手続きです。

派遣会社が取るべき抜本的な制度改正対策と不許可リスクの合理的回避

 法改正以降の環境下において、人材派遣会社が安定的に外国籍人材派遣のビジネスを展開していくためには、従来の採用・配置プロセスを根本から見直し、法的な適合性を最優先に置いた実務体制を構築することが必要不可欠です。

 外国籍人材に対して内定を出す前の段階、あるいは遅くとも在留資格申請手続きを開始するよりも前の段階において、派遣先企業との間で対象者を特定した個別契約を完全に締結し終えるという、逆算型の営業・採用スケジュールを徹底せねばなりません。タナカイサオ行政書士事務所では、他事務所での証明不足や書類の不備によって一度不許可処分を受けてしまった案件に対しても、対応可能ですが、不許可となった後に再申請を行うことは、企業の社会的信用を毀損するだけでなく、多大な時間的・経済的損失を被るため全く合理的ではありません。

 派遣会社側が取るべき対策は、申請に関わるすべての利害関係者、すなわち派遣元・派遣先・外国籍本人の三者間における法的な整合性を完全に整え、出入国在留管理庁の審査官に対して疑義を抱かせない書面構成を最初の申請時に提示することです。法改正後は現場の状況を加味せず必要以上に厳格運用が予想される審査難度の高い書面作成を、社内だけで完結させることは、最新の内部基準や裁量運用の動向を見誤る危険性を伴うため、判断に迷う場合や確実な許可を望まれる際は、実務に着手する前に、ビザ業務に知悉している行政書士に確認し、万全のサポートを受けることをお勧めいたします。